スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【--/--/-- --:-- 】
スポンサー広告
誰かを好きになること
入院中、私は恋をしました。

良くあるパターンです。
お世話をしてくれる人に恋心を抱くなんて、どこの安いマンガの話だ!

実際自分でも、彼のことが好きだと気付いた時に

(バカじゃないか)

と本気で思いました。


彼が優しいのは(優しくも無かったですけど)、私が患者だからのこと。
私たちの間に男と女という関係は成り立たない。

分かっていたはずなのに、私の中の好きは加速していくばかり。

不定休なので、平日でもお休みだったりして、彼が居ない詰め所を見て溜息が出たり。
思いがけず声を掛けられただけで、嬉しくて舞い上がったり。
彼の視界に入れてもらえないだけのことで、悲しくて塞ぎ込んでみたり。


数ヶ月前なら、考えられなかった。


私の心をズタズタにして去っていった最後の彼氏。
最低な男だから…と何度友達に言われても、断ち切ることも振り切ることも出来なかった。

「結婚しよう」

なんて言葉が出ていなかったら、もう少し穏やかな日々を過していたかもしれない。
少し泣いて立ち直れたかもしれない。

あんな言葉のせいで、私はずっとずっと泣きつづけて引きずりつづけて。

断ち切ろうとして、仲の良かった男の子と関係を持ったこともあります。
でも彼は、私が入院したのを機に私との縁を切りました。
似たような人がもう一人いたりで、私は入院してからどん底でした。

私の周りの人たちは簡単に私を奈落の底へ叩きつけてくれる。
誰一人罪悪感を抱くことなく、奈落の底の私に石を投げつける。

永遠なんてないのは分かってる。
ダイヤモンドを与えたその人だって、私に永遠を与えてはくれなかった。
彼の言う永遠は半年も持たなかった。


転院してから、私の気持ちが少しづつ緩み始めました。

珍しい男性看護師さんや男性介護士さんと関わって行く内に、何となく心が緩んできました。

彼らに対しては恋愛感情とやらは出てこなかったけれど

(悪い男ばっかりじゃないんだな)

とふと思い始めました。


その中に居たのが、私が好きになった人。


キッカケはとても些細なこと。

彼の匂いでした。


ある日、担当の理学療法士さんがお休みだったのです。
担当さんがお休みの日は、フォローの理学療法士さんが来てくれるのです。

確か3度目のフォローの日だったと思います。

最初に来てくれたフォローの理学療法士さんは、テディベアみたいなくるくるの巻き毛の人でした。
背も高いし、ガッチリしているのに、春の日のようにポワンとしたカワイイ表情。
病棟のどの看護師さん、介護士さんよりも優しい人。
私の中で彼を超える優しい人は未だに居ません。

次に来てくれたのは、小柄だけど元気な人。
ニコニコしながら、よく喋ってくれる人。
気遣いもしっかりしてくれて、とっても感じがいい人でした。

3度目のフォローの日。
カーテンの引かれた入り口に誰かが立ったのです。

(今日は誰かなー?Yさんかなー、Nさんかなー?)

入り口に立ったその人は少しの間動きませんでした。

(あれ?)

どうしたのかな?と思いながらカーテンの向こうの人を想像していたら、ふっと何やらいい匂いがするんです。

(この匂い何の匂いかなぁ?凄くいい匂い…どこかでかいだことあるけど、何の匂いかなぁ?)

首をかしげていると、コンコンとノックの音。

「おはようございますー」

と、マスクをずり下げて顔を見せてくれた彼。

(この人がいい匂いの人なんだ)

そう、こんなバカげたキッカケで彼に惹き付けられたんです。


話をしていくと、私の高校の後輩だということが分かったり。
周りの人から話を聞いたら、ご近所さんだと分かったり。
しょーもない小さな繋がりが嬉しくて仕方なかった。

ただ、それと同時に自分が置かれた立場を恨みたかった。

同級生だったら…。
職種は違えど同じ職場で働く人だったら…。
合コンで出会った相手なら…。

でも、恨んでも仕方がない。
こうやって出会う運命だったのだから。

患者と理学療法士。
距離はそれ以上縮まらないことを、患者の私は良く分かっていました。
何より、彼の心にはきちんと「患者さん」という線引きがされていて、近づくことを許してくれなかった。


損得勘定なしに、誰かを好きになれる。
数ヶ月前の私なら考えられなかった。

いつも打算が働いて「損」と「得」を天秤にかけて、「得」に傾かない人には見向きもしなかった。


仕事に対する真摯な態度。
真っ直ぐな目で困難に立ち向かう態度。
苦しくても悲しくても顔に出さない。

年下なのに悔しいほどにしっかりしていて、私の心を離してくれなかった。


退院を目の前にして、気持ちを伝えるか、黙っているか、凄く悩みました。

看護師さんや担当の理学療法士さんには相談していたので、もしかしたらあの時点で既に本人の耳に入っていたかもしれません。
だから敢えて言わないでもいいかとも思いました。


でも、相談にのってくれていた看護師さんが

「伝えてないと伝わらないよ?」

と、私の背中を押してくれました。


1週間ほど、ウンウンと悩みました。
脚本家時代より悩んだと思います。
安定剤を飲んでも、ぐっすり眠れない日々が続きました。

優しい人(リハビリは誰よりも厳しかったですけど)なので、伝えてしまうことで彼を悩ませてしまう。
NOしか彼の中に無いのは分かっていました。
分かっていて伝える意味があるのか。

ある日、目が覚めたら妙にスッキリしていて

(やっぱり伝えよう)

と思ったのです。

私は、事故の日に生死について直面しました。
生きるとか死ぬとかいうのは、自分が何とかできるものじゃない。

今伝えないと後悔するんじゃないかと思ったのです。

そう、私はこの記事を書いた直後に死んでしまう可能性だってゼロじゃないですから。

例え、私に与えられる答えがNOであっても、伝えよう。

私も彼も、明日生きているという保証はどこにもないんだから。

バレンタインに、チョコレートにカードを添えておきました。
何も知らずに子供みたいにはしゃぎながら受け取ってくれました。
嬉しそうに受け取ってくれたのだけが、救いでした。

翌日からは地獄でした。
多分、彼にとっても地獄だったと思います。

彼の方を見ることも出来ない。
彼の声さえ聞くことが怖かった。

自分に与えられる答えが一つしかないのが分かっていたから。

きっと意外と律儀な彼は伝えに来るんだろう。
何とか聞かないで済む方法は無いものか。
NOなんて答え聞きたい人が何処にいますか?

グルグル色んなことを考えていたけれど、動かしてしまったものは止まりはしません。

退院の日は突然決まりました。
転院も同じくらい突然でしたが、退院はそれ以上に突然でした。

火曜に退院の話が出て、当初は水曜と言う話でした。

さすがに親に

「明日退院するから」

と言ったら、帰りの荷物の多さに嘆かれると思い、木曜に伸ばしました。

水曜なら、彼はお休み。
今思えばあの日に退院しておけば良かった。
そうしたら、NOは永遠に私の耳には入って来なかっただろうから。


結局私は聞きたくなかった、分かっていた答えを聞かされました。

(どうしようどうしよう、このままだったら絶対答えを聞かされる)

病室から逃げ出したくなっていた夕方、私の病室に飛び込んできた彼。
同じタイミングで看護師さんが退院の話をしに入ってきました。

いつもと違う様子の彼を見て、看護師さんが部屋を出て行ってしまいました。

(あぁ~、いーかーなーいーでー!)

と内心すがりつきたかったですが、そういう訳にもいきません。

ホント言うと、何を言われたのか良くわかりませんでした。
彼は私を傷つけまいとハッキリと「NO」を出さなかったから。
ただ、遠まわしに何やら「ムリなんです」という言い回しを使っていました。

あの時、もういいからと言ってあげれば良かった。
分かってるからと言ってあげればよかった。

見るに耐えない彼の態度に胸が痛かった。
頭をクシャクシャしながら、ただただオロオロする彼を見て胸が苦しかった。
自分の罪の重さに潰されそうでした。


そこから数時間はただただ泣いてました。

分かっていた答えを聞かされた悲しみだったのか。
彼を傷つけてしまった苦しみなのか。
自分の事ながら良く分かりません。

でも、大きな一歩を踏み出せたのは間違いないのです。


誰かを人を好きになれる。


身体のリハビリをしてもらっていたはずですが、心のリハビリもしてもらったようです。

近森リハビリテーション病院でお世話になった全ての看護師さん、介護士さん、理学療法士さんに言い尽くせないほどの感謝をしています。

本当にありがとう。
私の背中を押してくれて。
私の話を聞いてくれて。
みんなが私のフォローをしてくれたから、私の心もきちんとリハビリされて元気になりました。

叶わなかった恋はもう心の箱にしまいました。

好きを思い出させてくれた、優しい彼がいつも沢山の幸せで包まれますように…。
彼を傷つけて苦しめてしまった私の一番の願いです。
スポンサーサイト
【2010/04/01 12:54 】
一日一笑 | コメント(0) | トラックバック(0)
<<第935回「短距離走、長距離走どっちが得意?」 | ホーム | 胸を打つ音楽>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://itinitiissyou.blog47.fc2.com/tb.php/1435-1cf5836b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。